東洋医学の視点から解説
ぎっくり腰になったことってありますか?
よく診療していると「腰が急に痛くなって診てもらえませんか?」と相談を受けることがあります。そして、次によく言われるのが「ぎっくり腰ではないと思うのですが…」と。
このぎっくり腰ではないのですが、というのがミソで、ぎっくり腰というのは正式名称でなく、世間一般的に言われているだけの俗称であり、正式名称は「急性腰痛」となります。
つまり急激に腰に痛みを感じれば、とりあえずは原因はなんであれ、程度の差はあれども「ぎっくり腰」となります。なので、急性腰痛の患者さんにはこれはぎっくり腰ですよ!と言っています。そして、患者さんの多くは、え⁉(まさか自分が?)みたいな感じになる方も、まあまあいます。中には、ぎっくり腰常連の方もいたりして、ご自身でわかっているツワモノもおられますが…。
痛みがでるきっかけは治療院に訪れるような方の場合には、大体が些細なことがきっかけであることが多いです。例えば、かがんだ瞬間、カーテンを開けようとしたとき、後ろの物を取ろうとした時など。これらのお話は実際に患者さんがお話をされていることです。そしてみなさんこの行為が原因で腰が痛くなったと考えます。
少し話を戻しますが、このぎっくり腰がなぜ起きるのかというと、ぎっくり腰自体の詳しいメカニズムというのは医学的には解明はされていないのですが、起きる人の傾向としては、疲労やストレスの蓄積、デスクワークや車の運転など同じ姿勢による腰への負担、寝不足など、がぎっくり腰がおきる前(数日~数週間)にやっていることが多いです。
原因は人それぞれなので、これ以外にもありますが、なんにせよ疲れをため込んで、腰へ慢性的な負担をかけていることがほとんどです。
閾値を例に例えると、0~100は痛みが出ていない状態で、痛みを感じ始めるのは100を超えたときとして、多くの方は腰の状態が0だったところから急に痛みがでた101になったと思っているのですが、実際は少しずつ負担をかけていて多くの方は90とか100近いとこまできていて、あとは何かのきっかけ(例えば、下のものを拾う、カーテンを開ける、前にかかんだ時、子供抱っこしようとしたときなど)でおきます。つまり、このような行為はただのきっかけであって本当の原因ではないということです。
からだが元気なときであれば、通常前にかがんだり、カーテンを開けるような程度では痛みは起こりません。つまり、その程度の動作で痛みがでてしまうぐらいに腰の状態が悪くなっていたと考えた方がよいのです。
ただ、中にはこれとは関係なしに起きるケースもあります。それは急に重い物を持ったり、捻ってしまったりなどのいわゆる腰の捻挫といわれる状況です。もちろん程度の差はありますが、こちらの場合はやった瞬間まったく動けなくなるケースが多いです。ぎっくり腰で出張治療に行く場合も、このケースが多いです。ほんとに動けずトイレもぎりぎり行けるかもしく間に合わない方もいたりで…個人的には重症タイプのぎっくり腰と思っているのですが、果たして鍼治療で治るのか、こちらも緊張感が走ります(;^_^A
いちおう言っておくと、重症タイプの場合でも少し時間はかかりますが治ります。治り方はケースバイケースなのですが、鍼治療をしてすぐによくなるというよりかは、直後効果はあまり感じられなくても、数日(多くは3日程度)治療を続けて行うと、改善が見られてきます。ぎっくり腰の場合は極論ほっておいても腰の炎症がおさまってくれば落ち着きます。ただ、ここまで重症タイプの場合だと、それには1週間と2週間とかかかることもザラではありません。おそらく鍼治療をせずにほっておけば1週間ぐらいはほぼ動けなかったんじゃないかなっていう方でも治療を続けていると3日目ぐらいから、いきなりではありませんが、動けるようになってるケースが多いです(今のところはですが)。
このように、急に腰に痛みを感じるということは、ただの結果であって、根本の原因にはその前段階として、腰に負担をかけている何かがあると、その何かを考えて、そこも含めて治療していくのが鍼灸治療になります。
次回は、ぎっくり腰が起きてしまった場合の対処法をお話ししていきたいと思います。